ギター、ウクレレによる手根管症候群 症状改善したケースの紹介

手根管症候群に関する記事をこれまで二つ書きましたが、今回は症状が改善した、という生徒さんのケースを紹介します。僕自身も痺れる症状に悩み、現在は改善しました。僕のケースもついでに含めて4人のケースです。4人に共通するのはギターかウクレレを演奏しており、演奏が直接の原因かは特定できないと思いますが、最終的(現在のところ)には症状が改善しているという点です。

それぞれ改善に至る経緯が異なりますので、同様に症状に悩む方の参考になればと思います。

手根管症候群に関する過去の記事

ギタリストの手根管症候群

Steve Vaiもギターによる手根管症候群

ケース1 手根管症候群と診断され、ギターの弾き方を見直し、症状も軽減

医者で薬による治療を受けても改善しなかったが、レッスンで左手を中心に体の使い方を見直した結果、症状が軽減した生徒さんのケースです。

エレキからクラシックギターに転向後、手根管症候群の症状が発症

元々エレキギターを独学で弾いていて、ナイロン弦のクラシックギター(エレガット)でソロ演奏をしたいと、2カ月に一度位のペースで単発のレッスンを受けに来た方がいます。左手の使い方(音程やコード)は分かるので、右手のテクニック(フラメンコギター奏法やゴルペのような叩く奏法)を中心に教えて欲しいとの要望でした。

レッスンを開始して1年位経過した頃に、左手で手根管症候群を発症してしまい、痺れと痛みによりギターを弾くのが辛くなってしまったとの事。エレキギターからクラシックギターに持ち替え、ネックの形状が異なる事が左手の負担になり発症したのでは、と本人も推測しています。僕と同じかなと思います。

ギターレッスンで体の使い方を見直し、以降症状軽減

これまでのレッスンと方針を変えて、右手の使い方だけで無く、弾き方、体の使い方を中心に月に4回のレッスンを開始しました。レッスンで下記の点に気づいて改善できました。

  • 左手で弦を押さえる際に不要な力を入れていた。→ 弦を鳴らすために必要最小限の力を確認。これはセンスが良いのかすぐに修正出来た様子でした。
  • (表現が難しいですが)ギターを必要以上に支えていた。座って、片足にギターを乗せ、両腕だけで無く胸やお腹も力一杯ホールドするように支えていました。 → 1)ギターが多少動いても弾けるという事、2)重力をうまく使って、足にギターを乗せれば体で支える作業も少しで良い事、を確認し、極端にはフニャフニャな感じで弾くよう心がけた。
  • (肩が中心と思いますが)右腕全体が常に緊張し、不要な力を入れていた

不思議な事にというか、僕と違い、症状が出る中心位置の左手首を折り曲げて負荷のかかるような弾き方はしていませんでした。左手の握力を必要以上に使ってはいました。

そして上記を中心に修正して行った結果、2カ月位で、手根管症候群の症状が治まりました。右腕が力んでいた事も何か左手首に影響していたのかも知れません。医者にも通院していましたが、検査結果も症状改善した(ほぼ治った)と。通院もやめて、月4回のレッスンも終了し、現在はたまにレッスンに訪れてくれています。

生徒さんの実際の声

半年位前に口頭で伺った内容です。

Q1:どのあたりに気を付けて良くなったか?
A:余計な力を使ってギターを弾いていた事に気づき、特に左手に気を付けていたらすぐに症状がおさまった。

Q2:症状はその後もおさまってるか?
A:弾き方が原因とハッキリわかり、それから症状は出ていない。

Q3:その他、レッスンしてから手根管症候群やギターの演奏に関連して気づいた点。
A:ネックの太いクラシックギター(エレガット)を弾くのが多少楽になり、上達のスピードも上がった。エレキギターを弾く際も不要な力を使っている場面がある事に気づけ、楽に弾けるようになった気がする。

弾き方を見直す事が出来た結果、元々問題無かったであろうエレキギターの演奏力の向上にもつかながった、という事と思います。僕も現在もエレキギターを触りますが、昔のまま弾いているように思います。この生徒さんの話を聞いてから、僕もエレキギターの弾き方を見直して、もう良い年齢ですが、演奏力を向上出来たら良いなと思った次第です。

ケース2 ウクレレを始めたら、手根管症候群の初期症状。弾き方を見直し改善

手根管症候群の初期症状と診断されたが、ウクレレの弾き方を見直し後、症状が軽減した生徒さんのケースです。

ウクレレを始めたら、症状が発生

ウクレレを始めた所、左手がしびれるようになった、と連絡いただき単発のレッスンを数回した生徒さんがいます。ウクレレが直接の原因か特定出来ないのは他の方同様ですが、ウクレレを始める前は症状が無く、医者では手根管症候群の初期症状と言われたとの事。最初のレッスンでウクレレを弾いてもらいましたが、左手の手首を曲げた状態でネックを握っていました。手首に負荷がかかるだろうという事と、手首を曲げた状態ですと指も自由に動けない、という結果になります。

レッスンで弾き方、ウクレレの持ち方を見直し、症状軽減

レッスンでは左手を中心に演奏フォームの見直しをしました。またウクレレを腕や体で支えるの事にも負荷がかかっていたため、ストラップを使う事を試しました。左手首がなるべく真っ直ぐになるように構え、ウクレレはほとんどストラップが支えている事を意識してもらった結果、

  • 左手首が真っ直ぐになり、そのおかげて指が弦に対して垂直方向から押さえられ、脱力にもつながった。
  • 左手の指が自由に動くようになった。
  • ウクレレを支えるという作業が不要になり、左手だけでなく、右手の自由も増えた。

レッスンを受けていただく本来の目的であるしびれ(手根管症候群)は、2回目のレッスン時にはあまり気にならないとおっしゃっていました。プラスして演奏力の向上にもつながったいたら良いなと思います。

生徒さんの声

メールでの質問に回答いただく形式ですが、生徒さんの声です。

Q1:どのあたりに気を付けて良くなったか?
A:〝手首を曲げすぎない形にしつこく矯正〟した事だと思います。
その為の姿勢や、ストラップ試した方が良いと言ってもらえたのが良かったし、指導がきっかけで、『自分はすぐ無意識に手首を曲げているな』という自覚が付いたのが、直すのに良かったです。


Q2:症状はその後もおさまってるか?
A:今は実は殆ど笛のほうをやってまして、レッスン後の時期を思い出しての回答になりますが。その後のウクレレ・ギター練習で手首が痺れ出すという事は無かったです。あと、多分ですが…もう痺れたりはしないだろうと思ってます。多分。1で回答した自覚がついたのが大きいです。


Q3:その他、レッスンしてから手根管症候群やウクレレの演奏に関連して気づいた点。
A:ウクレレは(ギターもでしょうか)姿勢が大事で、大袈裟に言ったら全身で演奏してて、手だけで弾いてるのではない(体の動きは手だけじゃなくってぜんぶ連携してますもんね)という事でしょうかね。。

現在ウくレレはあまり弾いておらず、笛(アイリッシュフルートと言っていました)が中心の様子ですが、再発が無いと良いなと思います。

ウクレレにストラップを使うかという話

話は少しそれますが、ウクレレを弾く際にストラップは使わない場合が多いように思います。その方がより手軽です。しかし、ウクレレを支える事に腕や体を使ってしまい、演奏するための動きが制限されてしまっている方を多く見かけます。ズリズリ落ちるウクレレを支え直しながら演奏と。

細かくは別途の機会に書こうかとも思いますが、初心者であればあるほどストラップを使った方が良いと思っています。結果的に早くウクレレ演奏が上達し、慣れてくると、ストラップ無しでも弾けるようになる人が多いです。

ケース3 手術で手根管症候群が改善したケース

手術により手根管症候群が改善したという生徒さんのケースを紹介します。手術の体験談という事にもなりますが、改善までの経緯が何となくでは無く、医学というはっきりしたものに基づいているので、一番分かりやすいケースと思います。

整形外科で手術を実施

フラメンコギターのレッスンを受講していただいていた生徒さん、手根管症候群になってしまい、手術をするのでお休みするとお話しをもらいました。ちょうど僕も左手の痺れで悩んでいた時期で、もう5,6年位前でしょうか。手術後2,3か月位はレッスンもお休みと思っていましたが、1か月前後で復帰されたように記憶しています。生徒さんに再確認したところ、2週間後にはギターを握っていたと。

悩んでいる方は手術という選択肢も考慮に入れて良いのではないかと思います。手術の方法(傷の小さい内視鏡手術か否か)、etcにより、回復までの期間など色々異なる事もあると思うので、もちろん専門の医者へ相談の上。

生徒さんの声

メールでの質問に回答いただく形式ですが、生徒さんの声です。

Q1:術後、症状はその後もおさまってるか
A:全く無症状です

Q2:復帰までの期間
A:術後、ゆっくりなら2wくらいでコードを押さえてました。
ただ私の場合は内視鏡手術で傷が小さいため、もし直視下で数センチ開ける手術の場合は復帰まで時間がかかるかも知れません。

Q3:その他、手根管症候群やギターの演奏に関連して気づいた点
A:ギターは手、肩、腰等に負担がかかるためケアが重要ですね、最近は右肩の痛みに悩んでます。

右肩の痛みが心配ですが、もしもギター演奏が原因になっているのならば、弾き方を見直す事で何か改善が見られるかも知れません。

ケース4 僕のケース 通院で手根管症候群が治らず、弾き方を見直し改善

ケース1と似ていると思います。僕の場合は整形外科へ通うが改善目途が無く、カイロプラクティックへも行き、ギターの弾き方が悪いのでは、という点に気づき、弾き方を見直して現在はほぼ症状無しです。

ここでは概要のみ書きます。詳しくは過去の記事も参照ください。

エレキギターからフラメンコギターに転向して、手根管症候群を発症

フラメンコギターも現在もたまに弾いていますので、はっきりと転向ではありませんが、ネックの太いフラメンコギターを弾き始めた事が発症の原因と思います。

整形外科では、薬と注射による治療をしました。手術は手術後の痛みでギターが弾けない期間が心配なため実施をせず(医者からも推奨しないと言われました)。カイロプラクティックへも何度か通い、症状が楽になる感じはありましたが、根本原因はギターを弾く際の体の使い方に原因があるのかなという事に気づきました。

そしてアレクサンダーテクニークというものをほんのちょっとですが、学んでみたり、弾き方を自分で色々検討してみた結果、徐々に症状は無くなり、現在はほぼ心配ないかなという状況です。

ギター、ウクレレを弾く時、脱力しない方が良い??

話が少々それますが、よく言われる事で「脱力」しましょう、という事について。「脱力出来るのであれば」理想的で良い事と思います。しかしながら脱力は難しく、時には不要な思考ではと思う事があります。ギター、ウクレレ、様々な楽器、スポーツなどあらゆる場面で同様ですが、脱力と思うとほぼ一度は不要な力を入れてしまわないでしょうか。脱力は不要な力みの状態から、力を抜いて行く事になります。

長くなりそうなので細かい事は別の機会に、と思いますが、「力を抜いて行く」事よりも「適切な所まで力を加えていく」事の方が簡単では無いでしょうか。実際に生徒さんに、試してもらうと「脱力して弦を押さえる」とするよりも「音が出るポイントまで力を加えていく」とする方が皆さん上手く行くようです。

時には不要な力も込めて演奏しましょう!?

もう一点、楽器、音楽の演奏時には不要な力も込める事が重要な場面があるように思います。音量や音質に必要な力以上を込めるからこそ、一瞬一撃の音が(見た目的にも)感動的だったり、力が入ってしまうからこそ出てくるリズムも含めた音楽の変化や揺れが人をひきつけたりするのかなと思います。

と結論を急ぎますが、「脱力」と思考するより、「必要最小限の力や動きで演奏する」と思考するのが良いと思います。脱力よりも実践が簡単ですし、時には爆発的な演奏も出来るのではと思います!

ギターやウクレレ、楽器演奏で手根管症候群になってしまったら?

まずは専門家であるお医者さんに診てもらうのが良いでしょう。そして楽器の演奏が原因であれば、演奏時の体の使い方を今一度見直してみてはいかがでしょうか。もしかしたら通院の必要が無いかも知れません。無理のある姿勢で演奏しているのであれば、それをより良くすることで症状の緩和だけでなく、演奏力の向上にもつながるのではと思います。自身で見直すことが難しければ、楽器の教室で先生に習ったり、仲間にも見てもらったり、自分の演奏を動画撮影したりと、客観的な視点も必要かも知れません。ネットで調べると、ストレッチなども有効という情報も出てきます(スティーブ・ヴァイさんも言ってました)。楽器を演奏しない方から聞いた話ですが、テーピングで改善したという方も。

以上、手根管症候群が改善した、というケースを紹介しました。症状に悩む方の参考になれたら幸いです。また演奏時の体の使い方や、フォームを見直す事は、(手根管症候群に関わらず)体の障害発生の防止にもなると思いますし、演奏力の向上にもつながると思います。

Follow me!