「Noche de Tango」CD紹介

CD音源の紹介をします。MASHIRO & LEONARDO BRAVOの二人によるアルバムでタイトル「Noche de Tango」。CD音源ですが、CD&BOOKという形式であり、音楽とともに読み物として、配信音楽には無い「モノ」としても価値があります。

CD&BOOK「Noche de Tango」
「Noche de Tango」

「Noche de Tango」の音源をレビュー

音楽のジャンルとしては、アルゼンチンタンゴで、フルート(MASHIRO)とギター(LEONARDO BRAVO)のデュオの形式で演奏、録音されています。

下記サイトにて購入でき、アルバムにも収録の曲、ピアソラの『Fracanapa』のサンプルを聴く事もできます。

https://nochedetango.jp/

僕はアルゼンチンタンゴというジャンルに詳しい訳ではありませんし、好きな音楽のジャンルなのかも今の所定かではありませんので、感想文になってしまうかもしれませんが、以下一応レビューです。

さっそく結論

このアルバムは単純に音楽として、とても良かったです。最近配信ばかりで音楽を聴いて、同じ曲を続けて聴く事やアルバム単位で聴く事が減ってきた所です。しかしこれは、ちゃんと気に入ったアルバムを続けて聴いてる、という感じです。

普段、僕はジャンル分けするとロックやフラメンコに当たるような音楽を多く好んで聴いていると思います。アルゼンチンタンゴというジャンルの音楽が好みなのかどうかわかりませんが、このアルバムは単純に良かったです!聴いてしまうと、それがどんなジャンルに分類するのが適切か、というのはどうでも良くなりますね。そしてすごいなと感心もしていしまいます。何が、というと、最初から最後までギターとフルートのみの演奏で終始し、エフェクトを使って音色を変えるような事無く、アルバム全体を聴かせてくれるという事。ロックでもフラメンコでも、ギターや楽器の雰囲気を曲によって変えて聞かせる事が多いかなと思います。時には一人しかギタリストがいないのにギター2本鳴っていたり。というのがこれまでの自分には当たり前したが、このCDはストレートな生音一本で色々な表情を出して聴かせてくれます。

スマホで外出先で、パソコン経由のモニタスピーカーで、スマホから飛ばしてEchoStudioで聴いたり、今の所今年一番のヘビーローテーションです。

レビューを続ける

と、感想文的なレビューが終わってしまったので、何らかの視点を設定して、それを切り口にレビューを続けてみます。

「Noche de Tango」をギターモノとして聴くと

自分もギタリストだからか、ギターで演奏された音楽は特に興味がわく事が多いです。ジャンルとしてCD屋では見かけませんが、「ギターモノ」として聴いてみると。

ロック界ジャズ界のギターヒローや、フラメンコギタリスト、アコースティックギターのパーカッシブなソリスト達に比べると、ぱっと見の派手さはありませんが、難しそうなフレーズを楽に弾いたり、余計な音が鳴りそうで鳴らない、など地味な所?でのすごさを発見できます。実績もつんでいるすごいギタリスト(詳しくは公式のサイトの紹介を参照ください)なので当たり前なのかも知れませんが、音色も表情豊かで、僕には真似するのも不可能かなぁと思ってしまいます。エフェクト一切無しで、柔らかい音も固い音も、伸びる音も切れのある音も、ボリュームも自由にギターを操りコントロールしているように聴こえます。音色はクラシックギターを使用しているからなのか、優しく丸い音なのですが、リズムは切れ味鋭く刻める、というのが特にすごいなと。

そしてギターモノとして、このフレーズコピーしてみたい、とかコード何だろうとか、右手どう使ってるんだろう、というのも沢山登場します。アルゼンチンタンゴなんて聴いた事無い、という方もギター好きなら聴いてみても良いかもしれません。

あと、ギターモノという点ではありませんが、ギターのみが聴こえる場面では、ギタリストの息使い、呼吸音のようなものが聞こえて来て、これがまた良かったです。何が良いかというと、ここで息をするのかー!というのが何故か面白いです。「息を吸ってからココを弾くのか」みたいな。エレキギターの録音では絶対入らないですけど、例えばジャズのレコーディング音源で、ドラマーの呼吸音が聞こえる事もありますよね。同様の?何とも言えない楽しみ方も本CDでは可能です。呼吸音じゃなかったらすみません。

「Historia Del Tango」の比較

アルバムの3~6曲目にかけて、ピアソラ作の「Historia Del Tango」という曲名の4曲が続きます。4曲が順にTangoの誕生からの歴史を年代を追っており、ギターとフルートのためにピアソラによって作られたそう。楽譜もある曲で、多くの人が演奏しています。他グループの演奏も聴きましたが、「Historia Del Tango, 4. Concert D’aujourd’hui」に関して、この二人の演奏が他の方々より速くて、切れ味鋭いですかね。テンションが上がって速くなってしまったのか、何度かリハーサルしているうちに速いテンポでやろう、としていったのか。二人で相談して「誰よりも速く!」となったのであれば、更に粋だと感じてしまいますが、速いというだけで聴く側も嬉しくないですかね!?

「Historia Del Tango」の4曲は、ギターとフルートのために作られただけに、同じ楽器構成で演奏されていることが多いのですが、フルートの切れというかアタック感とギターの抑揚の付け方は聴いた中でMASHIRO & LEONARDO BRAVOが一番です。そしてリズムを刻む場面では、スピード感があるのもこの二人がピカイチです。単にテンポが速いというだけで無く、リズムの刻み方、ノリの出し方が違うというか僕の好みのようです。

「Noche de Tango」をプログレ的に?

6曲目を聴いた際に、これは「プログレバンドの曲?」「20世紀後半日本のアヴァンギャルドグループの曲?」のような印象を受けました。それから再び先頭から聴きなおすと、全部の曲をプログレバンドが演奏してそうに思えてきました。。。2曲ほどその観点?から紹介してみます。

2曲目「Oblivion」

印象的なギターのアルペジオ風のイントロに、フルートのメロディが乗っかり始まります。展開はして行くものの、たんたんと静かに進み、煽られるような感じは無く、そーっと終わってくれる演奏です。感じ方は人それぞれと思いますが、悲し気で切なくもありつつ、希望は全く失ってないように感じ、前向きに聴けます。

この曲、KingCrimsonのファーストアルバムのメンバーに演奏して欲しい、というか、演奏してそうに思えてきます。ギターとベースがそーっと演奏するところに、イアン・マクドナルドがフルートを乗せて、徐々にドラムやメロトロンで音量とテンションを上げて演奏するのを聴きたくなるというか、音像が頭の中に浮かんでしまいます。このCDでの曲は淡々と進み終わりますが、エレクトリックの音像で大音量へ展開しても良さそうです。

そして不思議な事に、ギターはクラシックギターで演奏されているのですが、キレイに音が伸びるからでしょうか、エレキギターのようにも聴こえてきます。それがプログレっぽいと感じるのかも知れません。

6曲目「06 Historia Del Tango, 4. Concert D’aujourd’hui」

僕にとって、一番プログレ的に聴こえる曲なのですが、RUINSやMAGMAがこの曲を演奏するのを聴いてみたくなります。そう感じるのはこのCDの二人の演奏だからだろうか。先にも書いたように、この二人の演奏は、早くて切れ切れに聴こえます。速いのは音楽を評価する上で通常はどうでも良い事なのでしょうが、僕は他より速いだけで、だいぶテンションが上がります(笑)。それがプログレッシブロック的な喜びにも近いのかも知れません。

そしてこの二人の演奏は、他の方々よりも攻撃的に聴こえます。レコーディングの音質は比較的柔らかい感じではないかと思うのですが、フルートのアタックの出し方とか、二人の音の強弱の付け方、リズムの取り方が、ロック的というか、ドスッという感じがします。より重厚な音像でこの曲を演奏しているような他のグループと比較してみてもです。

この曲で出てくる音階がRUINSやMAGMAも使いそうで、それもプログレ的に聴こえる一因とも思います。本CDの中で一番エレキギターでカバーしてみたくなります。もしくはギター一本でソロアレンジできたらかっこ良さそうですが、難曲すぎます。。。

プログレ的拝聴まとめ

本CD全体として、メロディアスで情緒的でありつつも、ガツガツしてて攻撃的な場面もあり、それが僕にはプログレ的にも聴こえるのかも知れません。1曲目の始まり方もなかなか攻撃的です。例えば最初期のKingCrimsonがツアーでこれらの曲をレパートリーにしたら、初日と最終日では曲の長さもテンポも、構成も変わってしまうような、時には曲が繋がってしまったり、という演奏をしてくれそうに聴こえてきます。はたまた、本CDの二人が、パーカッショニストやマルチプレイヤーを引き連れてライブツアーに出たら、即興演奏を主体とするバンドとして、毎晩変化する演奏してくれたらなぁなど、想像してしまいます。

CD&BOOKという形式

音楽CDを買ってきた自分の歴史を振り返ると、同様の形式のモノを結構買ってきたかなと。バンドの歴史や写真が載っているbooklet付き、となると興味がわきつい、という感じです。そして通常と異なる形状のパッケージや物理的な巨大さにも惹かれて来たかも知れません。そして手元の「Noche de Tango」もかっこいいジャケットの本の中にCDが入っている、という感じでモノとしても気に入ってます。音楽を聴かなくても良いかも?笑

本と音楽を合わせて聴いてみると

また音楽の印象が変わるかもしれません。曲についての解説というかコメント的な文章を読み、その曲を聴いたり、アルゼンチンタンゴの歴史や生い立ちを読み、全体を聴いたり。

アルゼンチンタンゴの生い立ちは、色々な音楽、文化を混ぜて作られて編み出された音楽で、最初は場末のやさぐれた場所でダンスと共に演奏されていたそうです。アルゼンチンタンゴについての別の本で読んだのですが、初期の頃(楽譜化させる前)は即興的に演奏されていたとも。そんなことをMASHIRO & LEONARDO BRAVOは意識して演奏していたのでしょうか。混ぜて作った音楽で、即興的な面もあった、という点が僕がロック的、プログレッシブロック的に聴こえてしまう所以なのかなと、あらためて思いました。

誕生したての生演奏を聴いてみたい

本を読んで思う事は、場末の酒場でのアルゼンチンタンゴ誕生した頃の時代の演奏を聴いてみたいなと。酒場で演奏され、即興も多かったとなると、演奏者が客を煽り、客が演奏者を煽り、相乗効果でカオスとか爆発とも言えるような空間が生み出され、奇跡のような演奏が聴けた夜もあったのではないかと。

オリジナル曲が無い

何か批判的な事も、と考えていたらありました。MASHIRO & LEONARDO BRAVOというアーティストのCDですが、そのオリジナル曲が一つも無い、という事です。オリジナル曲が一つも無いCDを買うのは、生まれて初めてかも知れません。物理的なCD形式の買物を1,000以上(ほとんど中古)してきたと思いますが。全曲カバーアルバムというのも買った事が無いような。

バンドやアーティストがどんな曲を作るのか、というのもCDを買う大きな楽しみでしたが、このCDにはそれが無いのです。ただこういった(クラシック界隈では当たり前?)CDには既存の曲をどんな風に演奏、味付け、レコーディングするのか、という事を聴く楽しみがあります。楽譜にするとほぼ同じなのでしょうが、演者による違いを聴き比べで楽しめるのです。「Historia Del Tango」を意図して色々聴き比べましたが、なかなか楽しいです。ただ同じ曲の聴き比べにハマってしまったら、永遠に聴きまくってしまい、大変かも知れませんので、控えておきます。

そしていつか、MASHIRO & LEONARDO BRAVOのオリジナル曲を聴けたら良いなと。即興を主体としたライブも!

最後に

久しぶりに購入した音源になりますが「Noche de Tango」は買って良かったCD&BOOKです。ギター小僧はもちろん、ギター小僧以外にも、プログレッシブロック好きにも良いかもしれません。アルゼンチンタンゴとしてどうか、というのは分かりませんが、最近はアルゼンチンの音楽にも触れるようになりました。このCDやマシロさんの影響、周囲の音楽関係の知人からアルゼンチンのタンゴやフォルクローレをすすめられたりという影響もありますが、なかなか良いモノが多いです。

そしてギターをコピーしてみようとか、マシロさんの切れ切れのフルートと一緒に演奏したいとか、練習しなくてはと、やる気にもなります。

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